チアアスリートとメンタルヘルスの話題

23.07.25
アスリートプロテクション&ウェルネス

コロナが落ち着いてすでに数年が経っているアメリカで最近話題なのが
アスリートのメンタルヘルスの問題。
この不調、今までは話題に上らなかったのと、選手自身があまり語らなかったが
ここ数年で顕著に表れている。
テニスや体操の女子選手がメンタルヘルスを理由に公の活動や試合を欠席することは記憶に新しい。
そこでNBAダンスチーム・ボストンセルティックスのマインドヘルスウェルネスコンサルタントの話を聞く機会があったのでレポートしたい。

まずもともとアメリカではメンタルヘルスについて問題にはなっていたが、人々が話す機会がなかったという。
これはおそらくどの国も同じ。
Covid-19(新型コロナウィルス)が猛威を振るった2020年初旬から、徐々にロンリーシンドローム(孤独感)やソーシャルアイソレーション(社会的孤立)が若者の間で語られるようになり、
だんだんとこの問題について隠さずに発信してする傾向になり、結果この1年程でどのスポーツチームもメンタルトレーナーを持つようになったという。
もちろんチアチームも同じような動きはあるものの、メジャースポーツと比べるとまだその発展スピードは遅いとのこと。

現在のアメリカでは5人に1人が精神的に問題があり、ティーンエイジャーにおいてはその割合が3人に1人に膨れ上がり大きな社会問題となっている。
主な障害として挙げられるのが
・摂食障害
・不安障害、パニック障害
・気分障害、うつ病
・アルコールなどサブスタンス使用と乱用
・学生間の多額ギャンブル
・睡眠障害
・自殺願望
・学業障害
とのこと。

そんなに!と思うがその時に例に出た案件があまりにもリアル。

ある新人コーチがダンスワークショップに連れていくメンバーを決めるにあたり、
一番差し支えなさそうだからと、年功序列で高校3年生を2名選んだところ、
自己主張の強い高校2年生1名が『コーチは新人だから私のことを知らないだろうから一応言っておくけど私がベストダンサーだから』と
それはそれは長いメールでアピールされたとのこと。
当該コーチはその高校2年生に対し、メールで簡単に 『ごめんね、来年行こうね』と返信したところ、本人逆上。
その後コーチのデスクにいくつも能無しとメモが貼ってあったり、
SNSで同じようなメッセージが何百通も届いたり、とコーチにとってはいやがらせ以外のなにものでもないことが起きたとのこと。
コーチはすっかりメンタルをやられてしまい、今度はコーチが軽いパニックになってしまったとのこと。
実はこういったコーチがやられてしまうケースが増加しているとのこと。

事例としては聞いたことがあるのせよ、ここまでのいやがらせをコーチにするのは日本ではあまり耳にしない。
参加したアメリカでのコーチフォーラムでも、コーチは万能ではない、だからこそ言葉には気を付けないといけない、でもそうすると自分の意見を言えなくなる。
その場合はどうしたらいいか、悩みはつきないとのこと。

ではどうしたらいいのか。
アドバイスとして提案されたのが
・学校の体育会統括セクションと連携する
・学校のカウンセラーとの連携
・セラピストを気軽に利用する
などとにかく一人で抱えないということ。
人とつながっていることが自分を守るために今までより一層必要とされてくる。

コーチ同志が多くの経験をし、話す機会を持ち、悩みを分かち合うことで視野を広げ、
選手たちを追い込みすぎずに目的意識をもって、活動すること。
これが何よりポストCovid(コロナ収束後)に必要な活動とまとめた。

チアコーチはもともと明るいことに加えて、どうしてもこういった環境がない&作り出せないのと、
持ち前の責任感と体育会気質でがんばる、やりきる、となってしまう。
ただこの『気合』と呼ばれるものが一番危なく、
自己肯定感の醸成を妨げている一面もある。

自己肯定感こそがメンタルヘルスを維持するための最大の武器と言われているが、なかなか自分一人で醸成するのは難しい。
特に人前に出ることが多いスポーツである以上、
SNSの誹謗中傷にさらされることも多い。
このスポーツの発展に必要なのはコーチたちがしっかりと手を組み、不安や悩みを共有し、自分自身が気持ちよく、
そして選手たちを追い込みすぎずにエンジョイできる、豊かな環境を作り出していくことに尽きる。
まだまだ未来のあるスポーツ、大人がしっかりと温かい環境作りを心掛けていくのが、コーチと選手のメンタルヘルスを維持しながら発展していく秘訣である

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