Netflixで2019年12月に始まったドキュメンタリーシリーズ『Cheer』。
日本では『チアの女王』として有名です。
テキサスにあるエリートチアリーダーチームが主役になっているこのドラマには多くの魅力があります。
そしてドキュメンタリーなだけに、登場人物がリアルで大会会場で実際に会えたり
コーチも現存のコーチだったりと、身近なセレブリティが身近な環境で会える、とてもユニークなドキュメンタリードラマです。 しかしアメリカでは単なる才能豊かな大学生アスリートのストーリーでなく、ちょっとした問題が話題になっています。
それは競技スポーツにおけるボディイメージに対する姿勢。
そういわゆる体型問題です。
もちろん感動場面も多いのですが、実はこのシリーズでは体重が強調されることが常態化されているため、アメリカでは批判の対象となっていました。 特にチアのような表現かつ競技スポーツは摂食障害につながるボディイメージの問題を引き起こす可能性があり昨今のアメリカではかなり繊細な話題となっています。
たとえば『Cheer』の中で、監督であるモニカは、目に見えてはっきりとした筋肉があり
がっしりとした体つきの “ビッグボーイ “を好む傾向があるとコメントがあります。もちろん女性選手を数フィート宙にトスし、ほんの数秒後にしっかりとキャッチするには、当然必要とされる安心感ですし、ベースとしての高いスキルとパワーが必要ですが、同時にわかりやすく太い上腕二頭筋や強い腹筋を手に入れなければならない、というメッセージがモニカから発信されています。
『身体を研ぎ澄まさなければならない』とされる男性選手は女性選手が感じる『痩せなければならない』というプレッシャーと同じくらいあるとされています。
ドラマの中で問題とされている点は:
①競技会の審査員たちがルーティンの技術や正確さだけでなく、各選手のフィットネス・レベルも加点対象とされているとはっきりとエピソード内で語られている
②あるエピソードで女性チアリーダーたちがチームの 『体重測定日』にとても緊張し、規定の体重を維持するために食事制限を続けなければならないことを告白
③プラスしてこのシーンでは、女子の1人が100ポンド(約45.8キロ)未満であることも判明
④チームに所属する若い男性たちも、ボディ・イメージチェックがある
おそらくこのドラマがドキュメンタリーなので余計に批判の対象になるのでしょう。
そこで最近出てきたのがボディイメージムーブメント(Body Image Movement)というコンセプト。
ムーブメントというわけではなさそうですがコーチたちが率先し
今のカラダを大切にして、何はともあれサイズのことより、きちんとけがせず安全に動ける大きさを維持すること、と表現の仕方を変える、としています。
日本ではあまり大きな問題としてとらえれてはいないのですが
さすがダイバーシティの国、アメリカ。こういった問題もしっかりと話し合われているようです。
アメリカのオールスター協会、USASFのウェブサイト内にもメンタルヘルスマンデイのコーナーにボディイメージのビデオがあるので
よかったらご覧ください。
この中にはクイズ形式で練習をしばらく休んでいたアスリートやダンサーを見たコーチが、彼らの身長が伸び、体重が増えていることに気づいたとき
どのように対応したらよいか、と質問が出ており、その答えの選択肢として
A 以前のポジションは無理かもしれないとアドバイスする
B オールスターではポジションごとに体型が決まっていることを説明する
C 体型を戻すために栄養管理とコンディショニングを行う
D 笑顔で迎え入れる
があげられています。
答えはDなのですが、その追記事項にオールスター協会では
・あらゆる体型やサイズを受け入れており、コーチは選手やダンサーの価値を体型で評価すべきではない、
・コーチやオーナー、選手や保護者は、直接的にも間接的にも、体格や発育についてコメントすべきではない
とされています。
アスリートにはさまざまな体型、体重、体格、サイズがあります。
チアリーディング部やその他のスポーツチームに、正しい体格も間違った体格もありません。
競技の領域で重要なのは、持久力、筋力、安全性、勝ちへの情熱、チームワークといった特徴であるべきです。
競技スポーツの世界では、パフォーマンスを発揮するための身体への集中的な要求が高く、
またその身体がどのように見えるべきかという考えとがあいまって、摂食障害があまりにも一般的になっています。
女性アスリートの中には突き詰める結果、無月経になってしまったり、摂食障害を起こしたりしてしまっています。
チアに限らず一般的な世の中でも身体は唯一無二のもの。
自分の生まれ持った身体を誰かと比較するのではなくもっと愛すること、を促進する動きは
女性の自由でのびのびした生き方を応援するものなのではないでしょうか?
外見は関係ないまでは言わないにせよ、メンタルの部分では選手をいたわり、追い込みすぎることなきよう、大人たちは心掛けていきたいものです。